音楽が まわっていた頃 1

音楽は いつも まわっていた

ある時は ぐるーん ぐるーん と

ある時は くるくるくる と

 

 

テレビや ラジヲといった 受動的な媒体でなく

聴きたい音楽を かける 能動的な媒体の機械は

いつでも まわっていた

 

今や 死語となってしまった A面 B面

そっと針を 落とすと わずかにバチバチという音をたて

レコードから すべり出した音楽は 部屋中を 別世界にしてくれた

 

少年の頃 母親の趣味だったのだろう

日曜の朝には アイネクライネか 四季が 流れていた

今でも この曲を聴くと まどろんだ あたたかい記憶が 蘇る

 

初めて買ったレコードは たぶん 

松本伊代の 「センチメンタルジャーニー」だったと思う

イヨはもう 16ではない

 

生家でかかっていた コルトーの弾くショパン ベートーベンのロマンス

何度も 何度も 聴いていたせいだろう

いつも バチバチバチと 燃えているようだった

 

父親は ロシア民謡のようなレコードを 聞いていた

「オーマミ オーマミマミ ずーとマミーよ」 と 勝手に空耳アワーしていたフレーズは

今でも 油断をすると ジムの風呂で 口からこぼれてしまう

 

レコードは 聴けば聞くほど 炎に包まれていくかのように

音楽と ノイズのバランスが変色し セピア色の写真のようになり・・・

そういったこと 全て含めて 音楽だった

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

オトナになって ナニをドウ 間違えたのか

音楽に関わる仕事なんぞを トボトボと歩き始めていた頃

ガラクタ屋で 中古のレコードプレーヤーを 買った

 

実家から レコードを借りてきて 聞いてみたのだが

あれだけ 胸をときめかせてくれた ポールモーリアは

ハテ こんなウスッペライものだったのだろうか・・・

 

同じ頃 チェンバロ製作家から レコードを貸してもらい

オリジナルの楽器や 特殊な楽器の音を 聞く機会を得た

 

その中の1枚は その製作家が 

「このチェンバリストは とにかくスゲーから イッペン聞いてみな」

そして 聞いてみた ・・・ぶったまげた!

 

完璧なテクニックで もの凄い早弾き!

やはり外人はスゲー! ブーニン以上に サーカスな演奏なのである!

あまりにビビって A面もB面も あっという間に 聞き終えてしまった!

 

しかし レコードジャケットに 印刷されている録音時間と

実際に聞いていた時間が あまりに違うことに気づき

ようやく うすっぺらいポールモーリアと 早弾き外人の理由が 解明された

 

なんてコトはない・・・

33回転のレコードを 45回転で聞いていただけのことだった・・・

そんなふうに 音楽は いつも まわっていた

 

 

 ∵ 日 々 創 作  ∴ 時 々 仕 事

 

10/31 動画#73

         「ペンタの大冒険⑱

10/ 1 作曲#115

        「コンダーラ

9/ 3 作曲#114

       「茄子の慟哭

8/20 作曲#113

        「らむね

8/18 動画#72

        「ペンタの大冒険⑰

7/29 作曲#112

        「光合成

6/19 作曲#111

       「??(ハテナッシモ)

6/ 2 作曲#110

       「フェルマータ

5/22 動画#71

        「ペンタの大冒険⑯

5/10 作曲#109

        「震弦地

5/ 9 動画 #70

      「ペンタの大冒険⑮

4/27 録音 #80

        「La Sprezzatura

4/ 3 作曲#108

       「細胞分裂

3/ 4 作曲#107

       「ハレ男

2/10 作曲#106

        「花売娘

1/17 動画#68

       「ペンタの大冒険⑭

1/11 アルバム

   「704

1/ 8 作曲#105

      「ソナチネ