G線上のコリア

「韓国は熱かった!」

 

97日から11日まで、韓国はソウルで行われた

コンヴェルスム・ムジクムの5回のコンサートに同行されていたなら

皆さんも同じように思われたことでしょう。

どの会場でも、バロックからバを取ったコンサートなのでは?と

思わせるくらいの熱演と聴衆の反応でした。 

それでは、その詳細をアントレの諜報部員カヤノが、現場からお伝えしまーす。

 

 

6日:仁川上陸

かのマッカーサーが上陸作戦を果たしてから52年経った仁川に

9人の音楽集団が上陸しました。武久源造率いるコンヴェルスム・ムジクムです。

今回の韓国遠征メンバーは、武久源造、桐山建志、大西律子、高橋真二

深沢美奈、諸岡涼子、諸岡範澄、諸岡典経、山川節子の皆様です。

 

 

7日:コンサート・国立現代美術館

今回の韓国公演のアレンジは、ソウル在住のチェンバリスト、オ・ジュヒ女史

によるものでした。彼女は、ソウルのハニャン大学をピアノ科で卒業後

ベルリン音楽大学、ジュリアード音楽院でチェンバロを学び

現在はハニャン大学・ソウル大学・韓国芸術総合大学で教鞭を執りながら

ソウルバロック合奏団のチェンバリストとして活躍しています。

と、こんなゴテゴテな紹介をすると、何だか偉そーな人なのかしらん(?)と

敬遠されそうですが、どっこい、バリバリのソウルッ子で喜怒哀楽も激しく

実に人間味溢れる優しい美人な先生でした。(ポッ)

 

午前中は、オ・ジュヒと武久源造のデュオのリハーサル。

ツェルとジルバーマンという2台のジャーマンチェンバロは

日本からはるばる運んできました。

 

昼食後、ソウル大公園の中にある美術館の庭園へ移動し

今度はコンヴェルスムのリハーサルが始まりました。

といっても、庭園ですから、遊びに来たり散歩を楽しんでるカップルや家族連れが

すでにワンサカと集まって来てしまいました。

かくして、ソウルでの最初のコンサートは、老幼男女問わない聴衆の前で始まりました。

(ピンポンパンの公開録画状態!) 

 

ヴィヴァルディの「四季」の抜粋、ビーバー等の1時間強のプログラムだったのですが

お客さんの反応は実に率直で熱いものでした。

(えっ、やらせ?)なーんて思ったりもするくらいの拍手のタイミングと音量で

この反応はこの後のコンサートでますますパワーアップしていくのでした!

(余談ですが、この日の晩に、北朝鮮と韓国のサッカーの試合があり、00でした)

 

 

8日:リハーサル・ソウル大学コンサートホール

午前中は、武久源造とオ・ジュヒのチェンバロのみのリハーサル。

午後からメンバー全員でコンチェルトのリハーサル。

 

 

9日:コンサート・ソウル大学、ハニャン大学

まず10時からソウル大学でコンサート。聴衆は基本的に学生さん。

「四季」、ビーバー等を中心にしたプログラムでしたが…

学生さんの反応はピンポンパンより凄かった!

コンヴェルスムものせられてますます絶好調になっていく相乗効果! 

ソウルの渋谷と呼ばれている明洞の若者を、そのまま連れてきた雰囲気の空間。

しかし、余韻にひたる間もなく、次の会場へと移動。

 

午後5時からは、オ・ジュヒの母校ハニャン大学の音楽館でのコンサート。

これまでのプログラムに、バッハの2台のヴァイオリン協奏曲

2台のチェンバロ協奏曲、無伴奏ヴァイオリンソナタなどが加わりました。

ここでは最初にK教授がレクチャーを始めるのですが…学生はすでにシラケ状態。

最前列で居眠り、オシャベリ、携帯メール、と3大退屈しのぎを貪っていたのですが

コンサートが始まると、バロックでなくロックコンサートさながらの熱気に

包まれていきました。熱い演奏にはスタンディングオベーション

シリアスな演奏にはうなずきながらの重量感のある拍手。

会場は完全にひとつになっておりました。

(ヴィオローネの諸岡典経を、リンゴ・スターと間違えたのかと思うほどの歓声でした)

 

 

10日:コンサート・クムホアートホール

午後のゲネプロから、韓国の国営放送KBSの取材が入りました。

途中には、武久源造と大西律子のインタビューの収録。

そして、いよいよ午後8時からコンサートのはじまりはじまり。

クムホアートホールは、巨大なクムホビルの3階にある音楽専用ホール。

2台のヴァイオリン、2台のチェンバロの協奏曲で前半を終了し、後半は四季全曲。

聴衆のほとんどが音楽愛好家と聞いておりましたが、

反応はやはり熱く、何度もアンコールに引っ張り出されておりました。

 

 

11日:コンサート・トータルミュージアム

最終日は、午後から武久源造と桐山建志が音楽雑誌のインタビュー。

午後7時から、野外劇場でのコンサート。

セレナーデで始まって、アンコールもしっとりとした選曲で終わるプログラム。

ワインを楽しみつつ紳士淑女が、ウットリと聴きほれていました。

最後のアンコールの、最後の音を弾き終えた瞬間、桐山建志の弦が切れ

なんとそれが韓国ツアーをしめくくる最後の音となったのでした。

 

 

コンヴェルスムの視点

バロック時代に古楽というものはありませんでした。

当時の作曲家達は、その時代の限界に挑みつつ

その先を見つめながら創作をしていたように思えます。

だからこそ、時代や地域を越えて、現代の私達の心を惹きつけてくれます。

 

当時の作曲家の背景を見つめるだけに留まらず

彼等の見つめていたのと同じ方向を向いて演奏する、コンヴェルスムの演奏には

そんな視点を感じてしまいます。

過去の“スタイル”に忠実なのでなく、“方向”に真摯な演奏でした。

 

今回の韓国でのコンサートでは、

そういった視点の音楽の力を見せ付けられた気がしました。

韓国の聴衆は、モダンや古楽といった先入観はありません。

ただそこに演奏があるのみでした。そして、それに対して心のままに

正直に反応していたように思えます。

これらのコンサートを取材したKBSは

すでに来年の録音をオファーしてきているという情報も入ってきました。

 

 

そして、この韓国ツアーには大勢の協力者があって実現しました。

中でも、チェンバロ製作家の久保田彰氏は、わざわざこのコンサートの為に

日本初となるジルバーマンモデルを製作し、運搬から調律に至る

全てのコンサートサービスに全面援助をして下さいました。

まさに久保田氏のモットーである「音楽への奉仕」を

あらためて感じることのできたツアーでもありました。

 

 

韓国で覚えた言葉があります。ヘンボカダー(幸福だ)という言葉です。

メンバーもスタッフも、かなりの強行軍でしたが、熱い熱い聴衆の反応に励まされ

むしろエネルギーをもらって帰国できました。

がんばった分だけ、ヘンボカダーになれた1週間でした。

 

 ∵ 日 々 創 作  ∴ 時 々 仕 事

 

10/31 動画#73

         「ペンタの大冒険⑱

10/ 1 作曲#115

        「コンダーラ

9/ 3 作曲#114

       「茄子の慟哭

8/20 作曲#113

        「らむね

8/18 動画#72

        「ペンタの大冒険⑰

7/29 作曲#112

        「光合成

6/19 作曲#111

       「??(ハテナッシモ)

6/ 2 作曲#110

       「フェルマータ

5/22 動画#71

        「ペンタの大冒険⑯

5/10 作曲#109

        「震弦地

5/ 9 動画 #70

      「ペンタの大冒険⑮

4/27 録音 #80

        「La Sprezzatura

4/ 3 作曲#108

       「細胞分裂

3/ 4 作曲#107

       「ハレ男

2/10 作曲#106

        「花売娘

1/17 動画#68

       「ペンタの大冒険⑭

1/11 アルバム

   「704

1/ 8 作曲#105

      「ソナチネ